宗教について 〜 人の生と死を考える 注70

公開: 2023年3月26日

更新: 2023年9月28日

注70. 階級差別

階級差別とは、ある人が所属している社会階級(階層)が、周囲の他の人々と異なることが原因で、その人を差別し、仲間から排除しようとする行為を言います。例えば、その人が話す言葉(なまりなど)が、周囲の人々と異なる場合や、その人の着ている衣服の色やデザインが、周囲の人々のそれと異なる場合などです。これらの違いは、その人が育った環境や、その人の家庭の信条・思想・宗教などの違いから生まれるので、本人の問題ではありません。つまり、本人にはどうすることもできない問題なのです。親が貧しいために生じる違い、親の教育環境が違っているために生じる違いなどです。

現代のインド社会にも大きな影響を与えている「カースト制度」は、紀元前1千年以上前にインドの社会を制した、北方から来たといわれているインド・ヨーロッパ系の侵略達のヴェーダの神話に基づけば、人種間の違いを肌の色で区別した「肌の色」を意味していたそうです。そして、それらは宗教者の階層、武士の階層、市民の階層、労働をする人々の階層に分けられていました。それは、北方から来た征服した人々と、征服された現地の人々を区別するものでした。この区別が3千年以上も経過した今日でも、インド社会に影響を与え続けています。

特に、社会階層の違いに起因する問題の場合、それが教育水準の違いを生み、さらにその教育水準の差が、職業などの違いを生み出し、そのことで財産の形成状況が変わり、そのことが、その家庭の子供の教育にも影響すると言う、社会階層の固定化を生み出すことが知られています。裕福な家庭の子供が、良い教育を受けて、結果的に経済的に豊かになると言う連鎖による、社会における階層の固定化の問題です。

社会階層が固定化した社会は、進歩・発展が停滞し、衰退する傾向が強いと言われています。しかし、社会階層間の移動を可能にすることは、社会の不安定化を引き起こすため、政治的に容易ではありません。多くの宗教で、社会階層は否定されていますが、現実に社会階層のない社会は、これまで存在しませんでした。だからと言って、それが不可能であると言う理由にはなりません。それは、社会階層間で、差別を生み出さないようにすることは、教育によって可能だからです。

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